さいきん、帰りがけにイルミネーションをちらほら見かけるんですよ。
ごく普通の一軒家からちかちかといろんな色の豆電球のような光が明滅してる。
このイルミネーションってやつ、僕は結構好きでして。
冷静に考えれば単なる電気代の無駄なんだけど、
それ以上に僕はなんだか楽しい気分になってしまう。
なんでだろうと考えると、ひとつ思い当たる。
それは、たぶん、人を喜ばそうとしてるってことなんだな。
だって、どんなに綺麗に家の外をイルミネーションしたって、
中に住んでる人たちからはあんまりよく見えないだろう。
それじゃあ何のためにやってるかって、決まってる。
あの光はみんなを喜ばそうとやっているんだ。
タダで、いやあるいはちょっとした損をしたとしても。
そう思うとなんだか嬉しい気持ちにもなってくる。
エンターテイメントとは、本来そういうもんなんじゃないかな。
それから、僕は無作為に歩き始めた。
意味なんてない、いや、かつてはあったのかもしれない。
しかし、今となってはどうでもいいことだった。
もはやこの行為を、無作為というほかない。
僕は日がな一日、ほうぼうを歩き回り、暗くなれば夜をしのぐ場所を決める。
そして次の朝にはそこを出て、またほうぼうを歩き回るのだ。
無限の旅だ。終わりも目的も、どこかに置いてきちまったらしい。
退屈な旅だ。何もない。
僕は手近なピストルを握ると、自分の頭部にくっつけた。
「それで、どうするのかね?
自殺ごっこが意味のないことなんて君が一番知っているだろう」
――うるさい。
僕はぐっとトリガーを引いた。銃弾は忠実に軌跡を描く。
しかし、死ねない。いや、トリガーを引いてない。
すんでのところで自衛プログラムが俺の邪魔をした。
「お前はもう死ねないよ。普通の人間じゃないからな」
「死ねるのが普通かい?」
「忘れたやつのために一応名乗っとくと俺はライ
ダチに『ひぐらしのなく頃にってチョー面白いよ』
と言われてプレイしているところだ」
「いやーライさん、1ヶ月ぶりですなぁ」
「あぁ、まったくだ。
忙しくてひぐらしと言うかゲームどころじゃなかったからな。
ま、とにかく横浜が日本一になってよかったよ(パワプロ)」
「それにしても全然進んでねぇなぁ、ひぐらし」
「そうなのか? 俺はてっきり半分くらいいったと思ってたんだが
なんだっけ、大貧民してかくれんぼしてピクニック、
あとなんだったか……バラバラ殺人?
まぁいい、とにかく起動しよう」
「最後にやったのは11月10日かぁ……
まったく記憶にないな……」
「あらすじ機能とかあるといいんだがな……」
「あらすじ機能?」
「あぁ、ポリスノーツってゲームについててな。
セーブ直前までのあらすじを10行程度にまとめて見せてくれる
おかげで久しぶりにプレイしてもストーリーにのめりこめるってわけ」
「ま、じゃあかわりに俺があらすじをまとめてやるよ。
こんなんでいいだろ?」
父親の都合で転校してきた前原圭一。
お祭りやトランプやケンタくんを探してたらバラバラ殺人事件の話を聞いた。
でも関係ないのでかくれんぼして遊んだ。
「うーん、わかりやすい」
「ひでぇ……」
「とにかくお祭りなんだよ、カーニバルなんだよ!」
「お祭りか、いいねぇ……
原価安そうなのにキャラの袋に入っただけで500円もする綿菓子。
安っぽくて固い肉に甘ったるいタレの牛肉の串焼き。
大して美味いわけじゃないのに築地銀だこ並の料金をぼるたこ焼き。
どれもいい思い出さ……」
「……なぁ、お前お祭り嫌いだろ」
「ちくしょう! ふざけやがって!
なんだあのお祭りのくじ引きは!
PS2が欲しいから必死にためたお年玉で5回もやったのに
あたったのは30円で売ってるスナック菓子だけだ!」
「あー、当時40000円くらいしたからなPS2。
というかあのクジにはホントに1等はいってるのかね
……お! やっとそれっぽい展開になったぞ
お祭りの日、誰かが毎年死んでるだって……?」
「バラバラ殺人。ダム工事。
なるほどね……動機はそんなところだと思った」
「どうなってるんだ。祟りだと?
ふん、ジョークにもならんね」
「――オヤシロサマ。
どうやらそれが、事件のキーワードらしいな……」
To Be Continued!
寒い日のこと。
提出物の整理やらですっかりと夜になって、
寒い寒いとなげきながら自転車で駅から家に帰ってたんです。
その時間帯は、車もほとんど通ってなくて、静かで。
寒いけれど、その寒さも僕は結構嫌いじゃなくて。
僕は、冬の夜が好きなんです。
夜空を見上げたんです。
ふと。別に月も星も見るつもりはなかったんですけど、
本当にふっと顔を上げると、夜の空に星がちりばめられてました。
その瞬間、自転車をこぐのをやめて、ボーっと空を眺めてたんです。
本当に綺麗だなって。
それに、星に比べればずいぶんと小さい自分が、
たくさんの光り輝く星をこうして見ているのは、なんとも倒錯的で愉快でした。
星は、いいですね。
いくら手を伸ばしても、僕のものにはならないけれど――
――いや、だからこそ僕は惹かれてるのかもしれません。
この寒い季節に僕は自転車きこきこさせて駅まで通ってるわけですが。
いや、本当に寒い。洒落にならない。
朝なんかもう手足の感覚ないもんね、寒すぎて。
でも暑いよりは寒いほうが好きだな。
もこもこするけどあったかい服装ができるからね。
夏は暑いからってどうしようもないわけだし。
ま、一番好きなのは秋ですけど。
この前、歳末セールってことでウォークマン買いに電気店に行ってきたんです。
入り口には子供たちが遊ぶような簡単なプレイルームみたいなのも完備で、
お子様のいるご家庭も安心して買い物が~な大型店だったんですが。
プレイルームにご神体のごとく飾られてるピカチュウ。
電気ポケモンだからってなにもそんな丁重にピカチュウを飾らなくても……
と、まぁ、しかしピカチュウを買いに来たわけではないので無視。
で、お目当てのポータブルオーディオコーナーに。
順当にipodはスルー。狙いはSONYのウォークマンのみ。
価格を見る。2GBが14000円、4GBが20000円だ。
所持金は20000円……
買うことは買えるが、買っちまったら文字通りのすかんぴんだぜ。
だが、6000円で容量が倍になるなら……
貧乏人の僕にとっては高い買い物に、悩みに悩んだ。
が、そのとき僕は4GBさんからのお告げを聞いたのだ。
「ジミーや……己の欲望を信じなさい」
「わかったよ! 4GBさん!」
買う決心はついたんですが、レジに商品を持ってくときは震えましたね。
ぶるぶるですよ、もう。
でもまぁ、買ってからの感想としては文句なし。
NW-S716Fってヤツなんですけどね。音はホント素晴らしいです。
もうワンランク高い、ワンセグも見れるタイプもあったんですが、
僕あんまりテレビ見ませんしね。音楽と動画で十分です。
で、震える手で商品を受け取って、
衝撃を与えないように細心の注意を払って店を出ようとしたんですが、
入るときに見たご神体ピカチュウ。なぜか台座から転がり落ちている。
「ピカチュウ……」
栄光から文字通りの転落。
あまりに不憫に思った僕は、
ピカチュウをもとの台座にもど……そうと思ったがやめた。
早くウォークマンを試してみたかったのだ。
ごめんピカチュウ。つらいだろうが頑張れ。
あとでたぶん店員さんが直してくれるから。