もの書きwikiさんで、寝込んでるところ彼女がおかゆを作りにくるという
お題小説をやってたみたいなので、
練習もかねて勝手につくってみました。
ちなみに、そんなうらやましい経験したことないです、僕。
暖房器具のない一人暮らしの冬の部屋に喘ぎながら、
辻村太良は風邪っぽいぼんやりした頭で昼メシをどうしようか考えていた。
腹は減っているが、買い置きの食材もなんにもない。
近くにコンビニなんぞはないし最寄のスーパーもかなり遠い。
仕方ない、昼メシは諦めよう。
腫れあがったのどで咳き込みながら風邪薬のカプセルを口に含み、
ペットボトルのミネラルウォーターで流し込んだ。
食後に飲んでくださいとか書いてあるが気にしない、気にしない、
さっきからチャイムが鳴っているが気にしない。
俺は風邪をひいてるんだ! 放っておいてくれ!
チャイム。本来ぴんぽーんというチャイムが、
格闘ゲームのキャンセル技みたいに
「ぴんぽぴんぴんぽぴんぴんぴんぽーぴんぽ」とやかましいコンボを繰り広げる。
そして迷惑な客人は堪えきれなくなったのか、
ドアノブをガチャガチャやりはじめた。
もはや強盗である。
そういえば鍵をかけてなかったような……
太良はぞっとした。
なぜならこんなことをする非常識な知り合いは一人しかいなかったからだ。
風邪をひいてるってのに最悪だ。
客人――たぶん彼女は、ドアをバン!と音が出るほど激しく開け放った。
「ははははは、静馬さんがおかゆを作りに来た。
風邪をひいた可哀相なお前のために、
彼女である私がじきじきにおかゆを作りにきてやったぞ」
艶のある黒くて長い髪、綺麗な肌、女の子にしちゃ結構高い身長、整っている顔立ち、
素体だけを評価すればモデルのような彼女だが、
そのファッションたるやなぜか麦わら帽子、なぜか軍服、そして手にはなぜか鍋……
という奇天烈ないでたちだった。
目をまん丸にしてると、鍋を持った静馬は言った。
「おかゆだ、いくら国語が赤点のお前でもおかゆを知らないわけじゃないだろう」
「おかゆ……? 静馬で料理を……その鍋が? かゆだって!?」
「うむ、落ち着け、日本語は正しく使え。それはそうとキッチンはどこだ」
「やめてくれ、俺にバイオテロに加担しろって言うのか。
静馬、お前に料理のセンスがあるかないかはこのさい問題にしない、
やめてくれ。風邪をひいてるんだ」
「太良、私だって日々の鍛錬は怠っていない。
手作りお弁当事件の二の舞にはしない。
大丈夫だ、今度こそ……うん、大丈夫。む、キッチンはここか」
「おい話を聞くんだ! もう一度しか言わないぞ。ここで作るのだけはやめてくれ。
やめろ! キッチンに触るんじゃない! ガスコンロ! 水道! あぁ!」
抵抗などむなしく、すっかりおかゆの準備はされてしまったらしい。
「大丈夫だ、そうなるのは宝くじの当選確率よりは低いはず……だ」
「なんではず……で言いよどむんだ! 心配になるだろ!」
「ええい黙れ黙れ黙れぇ、それ以上うだうだ抜かすとここから追い出すぞ」
「お前ホント何しに来たんだよ!」
「風邪ひいてるんだから黙って寝ていろ太良、なぁに悪いようにはせん」
頭痛25%アップしながら、太良は諦めてキッチンを出ることにした。
これはもう運命と諦めるしかないのだろう。
おかゆを作りに来てくれた彼女という概念的要素のみを鑑みれば
俗世間で言うところのもいわゆる萌えであるのかもしれないが、
それを上回る経験予測上からの不安的要素を例えるなら
お約束ともとれる失敗を生み出すに他ない。
(混乱してますがまずいのが出来そうなのでとっても心配という意味です)
とりあえず太良は自分のベッドに戻った。
途中で毒ガスマスクをつけようか本気で悩んだがやめた。
さすがにそれはひどすぎる気がする。
寝ている間、キッチンのほうからぐつぐつと音がする。
太良にはそれが魔女の鍋の音に聞こえた。
考えることはこのさき出来上がるであろう、
彼女曰く「おかゆ」に対してどう対処するかである。
おそらく彼女は、食べ終わるまでは俺を解放しないだろう。
それを考えると頭が痛い。頭を抱えているとキッチンのほうからよし、と声が聞こえた。
「我ながらいい出来だ」という彼女の声。
死亡フラグという言葉が、頭を掠めた。
太良の頭の中に2つの案が浮かんだ。
すなわちすべてを受け入れおかゆと運命を共にするか、
この場所から立ち去りおかゆの悪夢から逃れるかだ。
もうじきおかゆ付き静馬がやってくる、あんまり悩んでいる時間はなさそうだぞ。
少しばかり悩んでから、太良は前者のほうで覚悟を決めることにした。
風邪気味で逃げた挙句、静馬と追いかけっこをする破目になるという
最悪の状態になるよりは、ここで倒れちまったほうがいいだろうと言う考えだ。
茶碗に盛り付けたおかゆを彼女が持ってくる。キッチンはどうなってるだろうか、
調理器具は壊されて無いだろうか、ガス管は損傷していないだろうか、
とりとめの無い不安感が精神に広がっていく。
「何か異常は無かったか……?」
「問題など無かった、いい出来だ。100点満点で言うと100点を取れるくらいに」
彼女は朗らかに言った。
確かに見た目は問題ない、いつもの見た目でKOするようなグロッキーさは控えめに、
普通の白いおかゆの色をしている。匂いについても問題なし、刺激臭はしない。
ごく普通のとおかゆのようだ。
しかし、箸が止まってしまう。体に染み付いた恐怖体験はそう簡単にぬぐえないらしい。
なんてひどい男なんだ俺は、彼女がせっかく料理を作ってくれたんだぞ。
ここで食べなきゃ男じゃねぇ。
気付けば手が震えていた。
彼女のがんばりに俺は応える。指の神経よ動け、震える手を制するように俺は命じる。
そしておかゆを口に含み、咀嚼し、呑み込んだ。
「ぐぁっ、あ゛ぁあ゛ぁあ゛お……ま、マズいなんてもんじゃねぇ!
毒だ! なんでおかゆが甘いんだ…う゛ふっ」
彼女の料理はまずは神経に作用し痺れを起こすのが特徴だ。
成分は劇薬に近いだろう。
やってくれたぜ、悪い意味で……
悶える俺を横目に静馬はあら、やっちまいましたわとでも言いかねない表情で
「ま、頑張れ」と言った。なにをがんばれってんだ、畜生! 確信犯か!?
「ぢくしょう……」
文句をいいたかったが、舌が痺れて動かなかった。
なんだか風邪もひどくなったような気が……
本日の教訓:恋人におかゆを出されたら死亡フラグ。
作者より作品分析。
オチにさんざん悩んだが、結局こんなひどいオチに。
おかゆを作る彼女にばかり注目してしまって、
そこら辺が曖昧になってしまった。よくないね。
静馬のキャラクターについては、
主人公の太良をいじくることに命を賭けてる女の子。
セリフとか少しも女の子っぽくないですが、
ボーイッシュな女の子っていいよねという僕の趣味です。
会話のノリや掛け合いなどはわりといいと思う。
自分で書いたものだから冷静に見れないところもあるかもしれないけど
そんなに悪くはないはず。
それにしても!とか?が多いな。
最後に、読んでくれてありがとうございました。
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